相続法の改正ポイント

平成30年7月、相続法が40年ぶりに改正されました。

 

残された配偶者が安心・安定して暮らせるようにするための方策、高齢化などの社会変化に対応する為の方策、相続トラブル防止などを念頭に改正が行われており、既に施行されおります。

 

当記事では主な改正ポイントと留意点についてご紹介させて頂きます。

「自筆証書遺言」の方式が緩和されました

「相続財産の全部又は一部の目録」を添付する場合、その目録については自署によらないことが認められました。パソコン等で作成し印刷したものや、不動産の謄本のコピー、通帳のコピー等も財産目録として認められます。【施行日:2019年1月より】

<留意点>自筆によらない財産目録を添付する場合、その目録の1枚1枚に遺言者の自筆の署名・捺印が必要となります(片面印刷であれば表面若しくは裏面に、両面印刷であれば両面にそれぞれ必要です)。

特別受益になる生前贈与の期間が限定されました

遺留分の算定に含めることができる生前贈与(相続人の特別受益にあたるもの)のさ遡り期間が、相続開始時から過去10年までに限定されました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>他の相続人の遺留分を侵害する目的で行われた生前贈与は、期間の制限無しとなります。

特別受益の持ち戻しが免除されるようになりました

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他方に対し、居住用の建物(自宅)やその敷地を贈与した場合には、この居住用不動産は相続財産から切り離され、遺産分割の対象外とされることになりました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>遺留分侵害額請求の対象からは外れないので注意が必要です。居住用不動産の贈与後10年以内に贈与者が亡くなれば、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

遺留分の金銭払いが原則化されました

遺留分を請求された場合は、原則として金銭で支払うことになりました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>遺留分を支払う側が現金を持っていなければ、現金を工面するために不動産の一部を売却することになりかねません。また、不動産を売却する場合、譲渡所得税(所得税と住民税)や売却経費等の費用が別途発生することにも留意が必要です。

被相続人の凍結口座からの引き出しが緩和されました

遺産分割が終わる前であっても、各相続人が一定の範囲で、故人の預貯金債権の払戻しを受けることができる仮払制度ができました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>各相続人が引き出せる上限額は、「預貯金額((口座ごと・明細ごと)×3分の1×払戻しを求める相続人の法定相続分」までです。また、同一の金融機関(複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)からの払戻しは、150万円が限度となっています。

介護による貢献で金銭請求が可能になりまし

被相続人の相続人以外の親族が、無償で療養看護等をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加があった場合、相続人に対して「特別寄与料」の支払いを請求できるようになりました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>特別寄与料請求権の有無やその額について相続人と協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に処分(審判)を求めることになりますが、家庭裁判所への請求期限は、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内です(相続の開始及び相続人を知らなかった場合でも、相続の開始の時から1年経過すると請求できなくなります)。なお、寄与料をもらった場合、課税額2割加算で相続税がかかることとなります。 特別寄与料を請求するためには以下のような条件・目安をクリアしなけらばなりません(下記の条件・目安は一例です)。
  • 被相続人が「要介護度2」以上
  • 特別寄与者による介護期間が1年以上
  • 特別寄与者が介護に専従していた
  • 無償での介護である

遺産の使い込みへの対策がなされました

遺産分割前に処分された財産について、共同相続人全員(処分した相続人を除く)の同意があれば、遺産分割の時点でもなお遺産として存在するものとみなすことができることとなりました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>処分された財産の有無の審理が必要となるため、遺産分割手続が長期化・複雑化するおそれがあります。

登記がより大切になりました

法定相続分を超える部分について、登記や登録などの手続きをしていなければ、第三者に権利を主張できないことになりました。【施行日:2019年7月より】

<留意点>取得に至った原因(遺言、遺産分割協議など)に関わらず、法定相続分を超える部分の権利を主張するには、登記や登録などの手続きが必要です。

配偶者居住権が新設されました

自宅の権利を「居住権」と「所有権」に分け、配偶者が居住権を相続できることになりました。「配偶者居住権」は、遺贈・遺産分割協議・審判などにより認められる必要がありますが、遺産分割時に現金が足りず自宅を手放すといった事態が起きにくくなりました。【施行日:2020年4月より】

<留意点>配偶者居住権は、それを相続した配偶者の死亡とともに消滅することになっており、居住権が設定されている間は、その居住建物の売却は困難になります。また、居住権の評価額の計算には、遺された配偶者の平均余命を用いるため、若ければ若いほど居住権の価格が高くなり、他に受け取れる相続分が減ることになります。なお、固定資産税の納税義務者は「所有権」を持つ者ですが、民法上は居住している配偶者が負担すべきものとなるため、注意が必要です。

遺言書が法務局で保管可能になりました

法務局の遺言書保管所において、自筆証書遺言の原本を保管してもらえるようになりました。法務局に自筆証書遺言を預ける際には、法律で定められた正しい形式になっているかの確認をしてもらえます。この「法務局における自筆証書遺言の保管制度」を利用した自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認手続が不要となることも大きなメリットです。【施行日:2020年7月より】

<留意点> 遺言者自らが遺言保管所(法務大臣が指定した法務局)に自筆証書遺言を持ち込み保管申請しなければなりません。自筆証書遺言を預ける際の法務局による確認では、遺言書の内容の法的な有効性等までは審査されません。また、保管制度の利用には費用がかかります。

以上、40年ぶりに改正された相続法の要点について解説させて頂きました。

 

なるべく分かり易く書いたつもりでしたが、法律用語などもあって理解するのがなかなか難しいかもしれませんね。当事務所では通常1時間1万円のご相談を初回無料にて承っておりますので、『私の場合はどうなるの?』と気になる方は、ぜひご相談にお見えになってください。

 

 

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